自分の思いを大切にすることは、やがて誰かを大切にする力になる
子育てをしていると、「わがままなのかな?」「甘やかしているのかな?」と、迷うことがたくさんあります。
たとえば——
「帰りたくない」「まだ遊びたい」と泣いてしまうとき。
「やだ」と言って、お片づけをしなかったとき。
「やりたいことがある」と、自分のペースを貫こうとするとき。
そんな場面で、大人はつい「我慢を覚えさせなきゃ」「教えないと」と思ってしまうかもしれません。
けれど私は、そこにこそ、その子らしさがあらわれていると感じています。
自分の思いを大切にされるという経験
子どもにとって、「自分の気持ちを受けとめてもらえた」という経験は、とても大きな意味をもちます。
「そんなふうに思ったんだね」
「そうしたかったんだよね」
——たった一言の共感が、子どもの心に深く残ることがあります。
それは、単なる甘やかしではなく、
「あなたの気持ちは大切だよ」というメッセージ。
そうやって育まれた安心感や信頼感は、やがてその子の内側に、“人と関わる力”として育っていくのではないかと思います。
自分の気持ちに気づけることが、思いやりのはじまり
自分の気持ちにふたをしてばかりいると、
やがて他人の気持ちも「わからないもの」と感じるようになるかもしれません。
でも、自分の気持ちを大切にされた子は、同じように人の気持ちにも気づけるようになるのではないでしょうか。
「あのとき、自分はこうしてもらえてうれしかった」
「だから、目の前の人にもそうしてあげたい」
——そんな気持ちが、自然と芽生えてくると思うのです。
我慢よりも、まず“気持ちを抱えていられる力”を
もちろん、社会の中で生きていくには、時に我慢や切り替えも必要です。
でもそれは、急いで教えこむものではないと私は思っています。
それよりも、まずは「気持ちを抱えたままでも、あなたはここにいていい」という経験をしてほしい。
そのうえで、ゆっくりと、「どうすればいいか」を自分なりに考えられるようになっていく。
それが、本当の意味での“自立”のはじまりではないでしょうか。
とらねこ音楽教室がめざすもの
とらねこ音楽教室では、「ちゃんとすること」よりも、「その子の今の気持ち」をたいせつにしたいと考えています。
泣いてしまってもいい。うまくできなくてもいい。
まずは、「音楽ってたのしい」「ここにいていい」と感じてもらえる場所でありたいのです。
そして、自分の思いを大切にされた子が、やがて誰かの思いにもやさしく寄り添える人に育っていく——
そんな未来を信じています。