「自信を持ってほしい」
「失敗を恐れずにチャレンジできる子になってほしい」
そう願って子どもと向き合っていても、実際にはどう関わったらいいのか迷うこともあります。
叱るのはちがう気がするけれど、ただほめているだけでいいのかな?
がんばってほしいけど、プレッシャーになっていないかな……?
私自身、学校で音楽の授業を担当していた頃、そんな迷いを何度も抱えていました。
そして、そんな中で出会ったのがアドラー心理学にもとづく「勇気づけ」の考え方でした。
「勇気づけ」とは、怒らず・ほめず・見守ること?
アドラー心理学では、「勇気づけ(Encouragement)」とは
子どもの“存在そのもの”に目を向け、困難に向かう力を信じる関わりのことをいいます。
よく似た言葉に「ほめる」がありますが、実は意味合いが大きく異なります。
ほめることが「成果に対する評価」だとすれば、勇気づけは「存在への信頼」。
◎「すごいね!上手にできたね!」(=成果を評価)
◎「自分でやろうとしてたんだね。見てたよ」(=過程と姿勢に共感)
また、アドラーは“勇気くじき”という言葉も使っています。
何気ないひと言でも、子どもが自分に対して「ダメなんだ」と感じてしまうと、
挑戦する気持ちを奪ってしまうこともあるのです。
教職員で共有した、忘れられない言葉
学校現場で「勇気づけ」について学んでいたあるとき、
教職員で“子どもを勇気づける言葉”を持ち寄って共有するという時間がありました。
その中で私の心に強く残ったのが、この言葉でした。
「あなたは、あなたのままでいい」
それは、子どもたちに向けた言葉だったはずなのに、
いつの間にか大人になった自分の心の奥深くにまで、そっと染み込んでいきました。
「ちゃんとできなきゃダメ」
「認められるには、がんばりつづけないと」
そんな思い込みにとらわれていた私自身が、この言葉に救われていたのだと思います。
おうちでも使える「勇気づけの言葉」たち
勇気づけは、特別なスキルではありません。
日常の中でのちょっとしたまなざしや言葉が、子どもにとって大きな支えになることもあります。
ここでは、家庭で使える「勇気づけ」の言葉をいくつかご紹介します。
- 「あなたがいてくれて、うれしいよ」
- 「自分でやってみようとしてたんだね」
- 「どんな気持ちだったの?」
- 「失敗しても、ここにいるから大丈夫だよ」
- 「うまくいかなかったけど、がんばってたの見てたよ」
どれも、成果よりも“過程”や“感情”に焦点をあてた言葉です。
評価ではなく、共感と信頼の気持ちが伝わるよう意識しています。
そして不思議なことに、これらの言葉は、
子どもだけでなく、私たち大人の心にも必要な言葉なのだと感じます。
おわりに:小さな勇気づけの積み重ねが、心の栄養になる
子どもたちが安心して挑戦できるようになるには、
「失敗しても大丈夫」「自分は愛されている」という確かな実感が必要です。
それは、何気ない日々の関わりの中で、少しずつ育まれていくもの。
私たち大人もまた、過去の体験の中でつまずいたり、
「できない自分はダメだ」と感じてしまうことがあります。
でも、そんな私たち自身に向けてこそ、
「もう、自分を責めなくていいんだよ」
「あなたはあなたのままで、大丈夫だよ」と伝えてあげたいです。