はじめに|音と味覚って、にている?
ピアノをひいていて
「あ、この和音、まろやかで、ちょっととろける感じ」
そんなふうに思うこと、ありませんか?
言葉にすると不思議だけど、
音には、味や質感のような“手ざわり”があります。
今日は、音と味覚——ふたつの感覚の共通点について、
小さな気づきを書いてみようと思います。
共通点①|どちらも「五感」のうちのひとつでは終わらない
たとえば、「甘い音」ってありますよね。
ふんわりとしたコード進行、
おだやかに包み込むハーモニー——
そこに「視覚」や「空気感」も加わって、全身で味わっているような感覚に。
反対に、苦い・しょっぱい音もある。
尖った音、意図的にぶつけたハーモニー、無音との対比。
味覚も音楽も、「体験」そのもの。
五感が響き合ってはじめて、「ああ、これ好き」って思えるのかもしれません。
共通点②|記憶と結びついて、ふっと心をゆらす
音楽を聴いて、ある日の情景がよみがえることがあります。
それと同じように、ある味を口にしたとたん、
「小さいころ、おばあちゃんと飲んだ、甘い麦茶の味」を思い出すことも。
音と味覚には、記憶と強く結びつくちからがあります。
それは、ことばよりもずっと深く、心の奥に届くもの。
共通点③|“あじわう”という行為は、人生を豊かにする
音も、味も、ゆっくりと味わうことで心がほどけていきます。
急いで食べたら味がわからないように、
流れていくだけの音楽も、聴き逃してしまうかもしれない。
“感じよう”とする意識があることで、
日常の音やごはんが、少しずつ深い時間になります。
おわりに|「おいしい音楽」「やさしい味わい」
とらねこ音楽教室で大切にしたいのは、
音楽を“習う”のではなく、日々の中で味わうということ。
季節の音、やさしい間(ま)、
ちいさな“できた”のよろこび——
それはまるで、
からだにやさしいごはんを、
ゆっくり噛んで食べたときのしあわせに、よく似ています。